院長ブログ

2024.04.08

前立腺がん、2040年までに全世界で倍増 英ロンドン大学予測

英ロンドン大学がん研究所は、2040年までに前立腺がんの年間診断数が全世界で現在の約2倍になり、同疾患に起因する年間死者数は85%増加すると予測する論文を発表した。 英医学誌ランセットに4日に掲載された同論文は、40年までに全世界で年間約290万人が前立腺がんと診断され、20年時点の140万人の2倍以上になると予測。特に低・中所得国の男性患者の増加が著しいとしている。同疾患による死者数は、20年時点の37万5000人から、40年には年間70万人近くにまで増加するという。 多くの高所得国では、前立腺がんによる死者は過去30年間で減少してきたが、低・中所得国、特に前立腺特異抗原(PSA)検査と呼ばれる早期血液検査によるスクリーニングを受けられない国では、患者数や死亡率が増加の一途をたどっている。だが、高所得国であっても、家族の中に既往歴のある人やアフリカ系の人、BRCA2遺伝子変異のある人など、リスクの高い男性は早期にPSA検査やMRI検査を受けることが推奨されている。研究者らは、50歳以上の男性であることや前立腺がんの家族歴があることなどの危険因子は避けられない条件であるため、生活習慣の改善や公衆衛生当局による介入では患者数の増加を食い止めることはほとんどできないと警告している。 論文の筆頭著者であるニック・ジェームズ博士は、世界中で男性の平均寿命が延びる中、前立腺がんの患者数が増加するのは避けられないことだと指摘。「患者数の急増が分かっている以上、今すぐ計画を立てて実行に移す必要がある」と警鐘を鳴らした。 前立腺がんは、すでに男性が罹患するがん全体の15%を占めており、世界の半数以上の国で、男性に最も多く見られるがんとなっている。女性が前立腺がんと診断されることもあるが、女性に見つかる確率は、生殖器がん全体の0.003%と極めて小さい。 転移性前立腺がんの治療法はないが、多くの症例は治療可能であり、早期に発見されれば患者が同疾患を克服することも珍しくない。米医学団体ジョンズ・ホプキンス・メディシンによると、最初の3段階以内に前立腺がんと診断された場合、5年後にはがんが消滅している可能性が高いが、末期のがんに対しては医学的にできることはほとんどない。同団体は、前立腺がんの80~85%は早期に発見されるが、発見が遅れた場合の5年生存率は平均でわずか28%と見積もっている。このように、前立腺がんでは早期発見が要となるため、検診を受けにくい国では同疾患の罹患率が高く、患者の死亡率も高い。国際医学団体の世界がん研究基金によれば、前立腺がんの罹患率が最も高いのは、アイルランド、スウェーデン、フランスなどの高所得国だが、同疾患による死亡率は、黒人が大半を占めるジンバブエ、バルバドス、ハイチ、ザンビアといった低所得国で最も高い。これについてランセットは、ほとんどの前立腺がん研究が白人男性を対象に行われていることを指摘し、異なる人種、特に西アフリカ系の患者を対象とした研究を進める必要があると強調した。 前立腺がんの闘病を公にする著名人も多い。英俳優イアン・マッケラン(84)は、05年か06年頃に早期の前立腺がんが見つかったと語った。米俳優ロバート・デ・ニーロ(80)も、03年に60歳で前立腺がんと診断されたが、その後完治した。その他、米国のジョン・ケリー元国務長官やルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長、俳優のベン・スティラー、投資家のウォーレン・バフェットなどが前立腺がんと診断されたことを公表している。 英国のチャールズ国王は今年初め、前立腺肥大の治療中にがんが見つかったことを明らかにした。英王室は国王のがんの種類については明らかにしていないが、前立腺がんではないとしている。国王の義理の娘であるキャサリン皇太子妃もがんと診断されたことを明かしたが、種類については公表していない。

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