前立線肥大症
概念
男性には膀胱の下にクルミ大の前立腺という生殖器があり、精液の一部を分泌しています。前立腺は加齢と共に徐々に肥大し始め、60歳代で約半数、80歳台では9割の人が前立腺肥大症と言われています。前立腺が肥大すると、その中心にある尿道を圧迫して排尿時の障害になり、排尿困難などの症状が生じます。
症状
初期の頃は夜間頻尿、軽い排尿困難程度ですが、徐々に排尿力の減退が顕著になってきて、おしっこに時間がかかる、おしっこがとばない、足もとにこぼす等の状態になります。また自分では気付かないうちに残尿が増えてきて、慢性尿閉の状態になることもあります。症状の程度を客観的に評価する方法として、IPSSというスコア表がありますのでご自身でチェックしてみてください。
検査・診断
直腸診で前立腺の腫脹の有無をまず診察します。肥大していてしこりなどなければ、それだけで前立腺肥大と診断されますが、中には癌を合併している事もありますので、その鑑別は必要です。前立腺の状態はエコーで検査します。また排尿状態の評価には尿流量測定検査を行います。排尿状態がグラフとなって表示され、排尿状態を客観的に評価する事ができます。
治療方法
治療には薬物治療、手術治療などがあります。初期の状態であれば薬物治療(尿道が広がりやすくなる薬、ホルモン剤など)を行いますが、前立腺が大きくて症状が強い場合は手術(内視鏡下の切除術)を行います。内視鏡手術には電気メスを使用する方法、レーザーを使用する方法があります。
前立腺がん
概念
泌尿器系の癌の中で近年もっとも増加傾向にあります。欧米ではもともと頻度の高い病気で、日本人には比較的少ないとされてきましたが、欧米に似たライフスタイルとなってきて、特に最近増えてきているようです。近年PSA(前立腺特異抗原)を測定するようになってからは、早期診断も可能になってきました。
症状
前立腺肥大症とは発生部位が異なって、どちらかというと前立腺の外側の方に発生しやすいので、排尿困難などの自覚症状が出にくい傾向にあります。前立腺癌特有の症状はありませんので、前立腺肥大症と同じように、排尿困難、頻尿などの症状があるようでしたら、早めに検査を受けた方が良いでしょう。
検査・診断
癌の場合は前立腺に硬いしこりができますが、早期の場合はしこりを触れないことも良くあります。
直腸診(肛門から指を挿入する診察)で異常がある場合、またはPSA値が高値を示す場合には前立腺の精密検査を行います。
前立腺の精密検査では経直腸超音波検査と前立腺生検を行いますが、施設によってはMRIを行うこともあります。前立腺生検は経直腸で行う事が多く、超音波ガイド下に直腸の方から針を刺して6-10本の前立腺組織を採取します。もし癌が見つかれば、どの程度進行しているかを検査します。シンチグラム及びCT等で骨、リンパ節などをまず検査します。その結果転移がなければ早期前立腺癌と診断されます。
治療方法
基本となる治療法は内分泌療法、根治的前立腺切除術と放射線療法になります。この治療法を症例症例で使い分けることになります。
内分泌療法:男性ホルモンを除去する治療です。前立腺癌は男性ホルモンがなくなると、癌が縮小して行きます。早期癌であれば内分泌治療で十分な効果が期待できますが、進行癌の場合は、初回治療で80%の有効率があるものの、約半分は数年の後に抵抗性となって再発してきます。
根治的前立腺切除術:根治治療として早期前立腺癌で比較的若年者(70歳以下)におこないます。術後の合併症として尿失禁、勃起不全がおこりやすく、ある程度の技術を必要とする手術です。近年は腹腔鏡下の手術も行われていますが、熟練が必要で一般に広がるまではまだ時間がかかりそうです。
放射線療法:根治的治療を目的として行う場合と、進行癌で局所の進行を抑えるときなどに行います。手術と違って70歳以上の比較的高齢者にも行うことができます。
HIFU:早期前立腺癌の低侵襲治療です。直腸から挿入したプローブにて前立腺癌を焼きます。保険適応外です。
予後
早期癌の場合は予後は良好で、手術、放射線治療では10年生存率は90%になります。
進行癌の場合は転移の状態にもよりますが予後3~5年と考えられます。
急性前立腺炎
概念
主に尿道から進入した細菌が前立腺内で増殖して炎症を起こす病気です。
症状
38度以上の高熱を伴い、排尿時痛、排尿困難、頻尿などの症状がでます。
前立腺の腫れがひどいときは尿閉になることもあります。
診断
直腸診で前立腺に圧痛を認め、尿検査で多数の膿球(うみ)が検出されます。
血液検査で白血球が増加し、CRPが陽性になります。
治療
抗生剤の点滴投与を行います。重症な場合は入院が必要です。
抗生剤による治療開始後2~3日で徐々に解熱してゆきます。
解熱後も尿及び前立腺所見が改善するまでは、抗生剤の内服が必要です。
急性尿道炎
概念
性行為に際して感染するすべての疾患を、性行為感染症と言い、急性尿道炎(淋菌性、クラミジア)、カンジダ感染症、性器ヘルペス、梅毒、エイズ、その他ウイルス感染などがあります。ここでは急性尿道炎(淋菌、クラミジア)に絞って説明いたします。
淋菌性尿道炎
性行為後2~7日の潜伏期間をおいて発症します。
排尿時の強い痛みと、黄色の膿汁の分泌がみられます。
放置すると前立腺に移行したり、将来尿道狭窄や不妊症の原因になったりする事があります。
診断は尿中に淋菌が証明されれば確定し、尿の培養検査、遺伝子検査などを行います。
治療は抗生剤にて行いますが、最近薬剤に耐性を持つ淋菌が増加してきており、経口剤だけでは不十分な場合があり、注射剤を使用することが多いです。
治療開始後3~4日で症状は改善しますが、症状が改善しないときはクラミジアとの混合感染が疑われます。
クラミジア尿道炎
性行為後1~3週間の潜伏期間をおいて発症します。排尿時痛などは淋菌性よりも軽く、尿道の違和感程度の場合もあります。尿中の分泌も少なく、白くさらっとした分泌液のことが多いようです。また全く無症状の不顕性感染であることも多く、感染を広める危険があります。
診断は尿中のクラミジア検査にて行います。
治療は約1~2週間の抗生剤の内服を行います。ジスロマックの1回投与方法もあります。
*注
来院される患者さんの半数以上がヘルスでの感染です。オーラルセックスで簡単に感染することを十分に認識しておくべきです。予防のためにはやはりコンドームが有効です。
別のパートナーへの感染も考慮する必要がありますので、罹患後交渉した相手には検査を受けさせましょう。
尖圭コンジローマ
性器、肛門周囲に発生するいわゆる「いぼ」のようなものです。
HPV(ヒトパピローマウイルス)が原因とされており、感染後1~8ヶ月で出来てきます。
主に性行為で感染します。
症状
男性は亀頭から包皮にかけて、女性は外陰部から肛門周囲に好発します。
痛み、かゆみなどの症状はありませんが、大きくなると性行時の違和感などが出てきます。
診断
好発部位に出来ている出来物をみたら大体診断がつきますが、確定診断には組織検査が必要です。
治療方法・予後
電気焼灼、凍結治療、ポドフィリン塗布、5-FU軟膏などで治療を行います。
再発することもよくあります。
女性の場合はHPVが子宮癌の原因にもなりますので、注意が必要です。
包茎
完全包茎
包皮をむくことができなく、亀頭が完全に露出されない状態。
無理して剥くと下に述べるカントン包茎になる危険がある。
陰茎ガンにかかる危険が高く、性交渉にも支障を来すので、手術が必要である。小児の場合は自然治癒することがあり、経過を見ることが多いが、軟膏治療を行うことが多い。
仮性包茎
包皮をむいて亀頭を露出させることは可能であるが、普段は包茎の状態である。
勃起したときに自然に亀頭が露出されれば、特に手術は必要でないが、勃起したときに陰茎が包皮で締め付けられるようだと、カントン包茎になる危険があり手術が必要である。また不潔になりやすく、病気にもかかりやすいので、場合によっては手術が必要になる。
カントン包茎
仮性包茎で包皮をむいた後、包皮が陰茎を締め付けて元の状態に戻すことができなった状態。
亀頭部の血液の循環不全が生じ、亀頭が痛みを伴って腫れてくる。用手的に整復でいなければ、緊急手術が必要になる。